新刊のお知らせ

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お久しぶりです。今回はサイト掲載する新しいお話!ではなく、新刊のお知らせです。長いこと新しいお話をあげられなくてすみません……

7月18日、19日に開催されたWebイベント【きみにつづく航路をたどってvol.2】に参加しておりました!

原稿が遅れに遅れましたが、どうにか新刊が出ます〜〜〜のでそのお知らせです。この記事後半に収録内容サンプル2本掲載してます

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CP:ベックマン×ネームレス女夢主
タイトル:「calamelized sugar」
収録内容:再録1話(諦念)+書き下ろし1話
単話完結でそれぞれ夢主が異なります

【サイズ】 文庫本サイズ(A6)
【ページ数】 120頁
【発行日】 2025/7/18
【初出イベント名】きみにつづく航路をたどってvol.2
【年齢制限】 全年齢向け
【値段】1500円
【頒布サイト】https://xfolio.jp/portfolio/fmiknmi/shop/48483

⚠️注意事項⚠️
発送までお時間いただきます。7月29日以降順次発送予定です

 サンプル①

    たった一つの理由でわたしはベックマンと別れることに決めた。それはとても陳腐で他愛のない理由。付き合う前から薄々こうなるんじゃないかと考えていたことでもあった。
「ごめんね。ベック。いままでありがとう。あなたのこと、もうどうでもよくなっちゃった」
 いつかこんな日が来るのではないかと思っていた。だからシミュレーションは十分すぎるくらいに出来ていた。彼がわたしに飽きるのが早いか、それともわたしが彼に呆れるのが早いか。そうやっていつかはこの関係に終わりが来るとわかっていたはずだった。
 
 それはナワバリの島へ上陸した日のことだった。
 当然のように開かれた我ら赤髪海賊団を歓待する宴。およそ全クルーが参加しての宴席だった。そこにはいつも通り沢山の料理と酒とそれからとっておきの美女たちが並んでいた。船長、副船長に大幹部たち、彼らの周りにはひっきりなしに人が侍り酌をする。
 この海賊団がナワバリを増やすにつれてこんな景色も随分見慣れたものになっていたし、自分の旦那が酌をされている程度で今更腹を立てるつもりはなかった。おおむねいつも通りだなと思ったわたしは彼らからは離れたカウンター席で静かにしっぽりと酒を楽しむつもりでいた。
「ねェ副船長さん」
 けれどこれだけ離れていてもその甘ったるい声をわたしの耳は聞き拾ってしまう。ああいう声ってのはどうしてこうも聞き取りやすいのだろうか。そして低い声とはどうしてこうも聞き取りにくいのか。彼がなんと答えたのかは分からないけれど女の方がご機嫌な様子で弾んだ声を響かせるものだから、どうせプレイボーイぷりを発揮しているのだろうなと察せられた。甘い女の笑い声とそれに応えるらしい低く聞きなれた声。いつも通りと言えばそうだった。だから特別なにか普段との違いがあったわけじゃない。むしろ何もなかったというべきだろう。わたしの心はあっさりと決断を下した。
「もういっか」
 零れ落ちた声は宴の喧騒にかき消さていく。けれどそれを拾いあげる声が彼女の背後からかかった。
 
 〇
「なァーにがいっかだよ。しけた面ァしやがって」
 誰に聞かせるつもりもなく呟いた彼女の静かな声を拾い上げたのは彼女の旦那ではなく、同じころに乗船したいわば同期だった。
「べつに。なんかもう飽きたっていうか呆れた? っていうのかな」
「なんだよあの人とうまくいってねェの? ついこの間まで浮かれてはしゃいでなかったか?」
「何年前の話してんのよ」
「おまえがまだピチピチだった頃?」
「いまでもピチピチですぅ」
 唇を尖らせて文句を言うと同期はへーへーとあからさまに受け流して自分のジョッキをぐびりと煽る。
「で、なにがもういっかなわけ」
 聞き流されたかと思いきや話を戻され束の間逡巡する。
「それきく?」
「なんだよやめとくか? おれはどっちでもいいぜ」
 彼女はこもる熱を吐き出すようにほうと吐息を漏らしてから話始めた。
「いやだとか、辛いとかじゃないの」
「へェ」
「ただなんて言ったらいいのかなァ。もうどうでもよくなっちゃって」
「どうでもねェ?」
 同期はこちらの言葉を待っているらしい。はっきり言っちまえよと促されて、それまで明言を避けていた彼女もとうとう重い口を開いた。
「あの人がね、わたしのことを忘れてもいいやって」
 見えやしないが背後からは相変わらず談笑する声ばかり聞こえてくる。喉を鳴らすような彼の低く響く笑い声ときゃらきゃら笑う女の声。
「あァ? そこは別れたいとかそういう話じゃねェのかよ?」
 心底理解できないといった表情で同期が唸る。
「別れたい、のかなァ」
「そんなのおれに聞くなよ。おまえがどうしたいかだろ」
 自分がどうしたいか。言われて初めて彼女は自分の中にあった靄を形にしようと言葉を探す。
「うーん、きっとね別れるって言ったら一応それなりに気を遣ってくれる人だと思うの。一度は好きだなんだって間柄になったわけだし、それなりに筋は通してくれる人だから。でもそうやってわたしのことで彼を煩わせるのが嫌っていうのかな。もうわたしのこと考えてほしくないのかも」
 例えばいまも隣に複数の美女を侍らせている彼だが、例えば今、こんな場面でわたしを見てよなんて可愛い嫉妬一つ出来なくなっていた。すぐそばにわたしがいるなんて思い出さないでほしいと思うようになってしまった。目の前の女の人に集中してわたしのことなんてすっかり忘れてしまっていればいい。そう思うようになったのがいつからだったかなんてもう覚えちゃいない。
本当はただわたしが意気地なしなだけだ。別れようと切り出す覚悟も、わたしのことなんていらないんでしょって正面切って詰めるだけの胆力もない。どうしたってわたしはベックマンの前ではただの、弱いばっかりの女になってしまう。普段のわたしらしくもない弱気が顔をだす。
 他の誰かと比べてほしくない。比べられたならきっとわたしはその誰かに負けてしまうから。それならいっそ彼の意識の外にいたい。ただの女でもましてや恋人でもない、ただの一船員に戻ってしまえば。だから
「わたしのことなんて忘れてくれたらいいのに」
「ははァ重症だねどうも。どう拗らせたらそうなるんだかおれにゃ分からねェがよ。おまえはそれで本当にいいのかよ」
「いいんじゃない? 別に。っていうか今更でしょ。いつもわたしのことなんて忘れてお楽しみじゃない。むしろまだ別れようって言うだけの覚悟が決まらなくてごめんねっていうかさ」
「ハァ? んだよそれ意味わかんねェ。なんでお前が謝らなきゃならねェんだよ」
 口にした謝罪の言葉に彼は声を荒げた。我がことのように憤慨して見せるその青年をみて「青いなァ」と感じてしまったのは無意識にわたしがあの人と比べてしまったせいだろうか。管を巻いては酒を呑み。呑んではまた管を巻く。それを繰り返すうちに彼女の夜は更けていく。
「だいたいあの人も毎度ガンつけるくらいなら一緒に呑んでやりゃいいのに……」
 そうぼやく同期の声をおぼろげに聞きながら彼女の意識は夢の中へと迷いはじめていた。
 いつまでも続くかのように思える宴の時間もしかし一人また一人とジョッキを煽る手を止めて顔面から突っ伏すようにして寝息をたてはじめる。なかには夜の街に消えていく者も。そうしてごく自然に喧騒は遠く夢の奥深くへと消えていった。
 
「ったく無防備にも程があるだろう。こちとら気が気じゃないってのにお嬢は毎度呑気なもんだなァ」
 抱き上げた彼女の頬にキスをしてベックマンは宿へと歩を進める。彼女を起こさない様に出来るだけ静かに。頬を撫でる夜風が心地いい。音の少なくなった夜更けの街を彼は歩く。愛しい女をその腕に閉じ込めて。
 
  〇
「く……べ、く」
 深夜とも早朝ともつかないそんな曖昧な時間、ベッドの中。耳元に届いたのはくぐもった彼女の呼び声。その声にうっすらと覚醒した男は靄のかかる思考のまま周囲の気配を探った。近くに感じたものと言えば宿にいる人間たちと建物の外に酔って眠りこけているクルー数名。特段警戒するような状況でもないとわかってベックマンは彼女に甘えるように擦り寄った。すると愛らしい唇がまたなにかを訴えようと動く。
「も、いいよ、べっく」
 そう告げた彼女の眉間には皺が寄っていた。
「……れても、いいんだよ。べっく」
 夢の中で彼女はいったいどんな体験をしているのか。自分の名前がでてくるあたり夢の中でも彼女はおれと一緒にいるらしい。それならば、と彼女の耳元に口を寄せ囁いてみる。
「お嬢さん、なにがいいんだ。おれに教えてくれ」
「だからいいの……わすれてよ。べっくはやくわたしを忘れてね……」
 その声が漏れるごとに眉間の皺を深くしたのは彼女もベックマンも同じだった。

「諦念」

サンプル②

「きみを待っているよ」
 あの人がわたしを呼んでいる。わたしは彼の元へ行かなければならない。それは義務ような使命だったような。荷物を全て捨てればもっとはやく辿り着けるだろうか。とにかく、はやく、行かなくちゃ。
 そう思って暗闇のなか足を踏み出し、そして――目が覚めた。
 
「待ってるって誰?」
 誰かが確かにそう言っていたはずなのにその言葉以外はなにも思い出せない。相手が誰なのか、自分がどこに行こうとしていたのか。何ひとつとして思い出せないのに一刻も早く行かなければという焦燥感だけが残っている。けれど、呼吸をするごとに、起き抜けの頭からそんな不安もモヤモヤとした感覚もすぐに滑り落ちていった。
 しばらくぼんやりと窓を眺めていれば珈琲の香りが鼻腔をくすぐった。まとまらない思考はいとも簡単にその芳香に攫われていく。
「おはよう」 
「おはよ。ベックもう起きてたの?」
 手渡されたのはシンプルな白のマグ。備えつけのものらしい簡素なカップからはいつにも増していい香りがした。もしかしたら昨晩のパーティで出された珈琲と同じものかもしれない。ルゥと連れ立って調理場へ向かうと言っていたからきっとその時だろうと見当をつけてみる。
 ひと口すすると口内に香りが広がった。やっぱり昨晩飲んだのと似ているような気がして彼に答え合わせをしてもらおうかと口を開きかけたそのとき。ほんの一瞬のことだった。酩酊感にも似た頭が揺らぐような感覚に思わず目を瞑った。
「なんだまだおねむか?」
「んー……や、もう平気」
 もう一度ゆっくりと珈琲を口にしたけれど同じ感覚に襲われることはなく、ベッドを出て着替えを選び始めると頭の中はすっかり今日のデートのことで埋め尽くされていく。窓の外からはもう街行く人々の賑やかな声が聞こえてきていた。
「お手をどうぞお嬢さん?」
 気障な台詞を口にしていたずらっ子みたいに笑う彼に今日もわたしは胸をときめかせデート日和の晴れ空へ足を踏み出した。
───────(中略)
そして一週間後。島内でも城に次ぐ大きさを誇る荘厳な教会に集まったのは国民と隣国諸島の来賓たちだった。
控室を訪れた王子は花嫁に語り掛ける。
「もうすぐだね。後悔はない?」
「後悔? なぜ? わたしはこんなにもあなたを愛してるのに」
「それを聞いて安心したよ。ありがとう。もうきみはぼくのものだったね。時間だ、先に行って待ってるからね」
 彼の表情が一瞬歪んで見えたけれどすぐにいつもの優しい微笑みに戻っていた。もうすぐ彼との未来が始まる。それは幸福な予感だった。
 バージンロードの先に待つ彼の元へわたしは一人で進んでいく。海に出たときすでにわたしに親はいなかったし、大切な人と呼べるような相手といえば赤髪海賊団のみんなくらいのものだったけれどわたしはそれを捨ててここにいる。当然バージンロードをともに歩く人なんているはずもなかった。それでも後悔はない。この道の先に待っているのはわたしがこれから愛していく人なのだから。
 快晴の空の下、結婚式は順調に進んでいた。
「病める時も、健やかなるときも……」
 静謐を保つ空間にわたしの声と彼の声はよく響いた。互いに誓いを立て、指輪の交換を終えると最後に「誓いのキスを」と段取り通りの台詞が告げられる。ベールを取り払われてクリアになった視界に彼の顔がゆっくりと近づいてくる。わたしはそっと目を閉じた。あァこれでわたしは正真正銘彼のものになるんだ。そんな思いを噛みしめて彼からの口づけを待った。
 けれどそれがやってくることはなかった。唇が触れる、まさにその時だった。重い発砲音が静寂を打ち貫いた。会場は一気に騒然となる。立ち上がり逃げ惑う人々を後目に二階ギャラリー席から一つの影が飛び降りてきた。
「おいあれって」
「四皇の」
 その姿を見るまでもなく、誰がこの式をぶち壊したのかすぐに分かった。それはあまりにも聞きなれた発砲音だったからだ。
「ベックマン……、何しに来たの?」
「なに大したことじゃねェよ。ただ、てめェの女を迎えにきただけだ」
 はっきりと別れを告げたはずなのに堂々とやってきたベックマンをわたしは睨みつける。
「彼女が愛しているのはあなたじゃない。この僕さ、だろう?」
───────(中略)
大人しく瞼を閉じた恋人に「いい子だ」と呟けば小さく笑う彼女の声が聞こえた気がした。
     〇
 
 わたしが目を覚ますとホンゴウがすぐに駆け寄ってきた。それから、あちこち調べられて一晩を医務室で過ごした後、案外すんなりと自室へ帰されることになった。ベックの姿を探しているとちょうど食堂から出てきたらしいライムが後始末に出ていると教えてくれた。
「そんなへちゃむくれた顔してんなよ。副船長なら夕方には戻るってよ」
 へちゃむくれとはなんだライムのくせに。といつもなら言い返しただろうけれど、今はそんな気力もない。久しぶりに自室へ戻るとそこには出しっぱなしのアクセサリーボックスがあった。机の端には紙切れとピアス。紙切れには『ベックマンへ』とあるがそこから先は白紙だった。術中に嵌っていたとはいえ過去の自分の行いに正直反吐がでそうになる。
「どの面下げて会えばいいんだろう」
 身勝手にも今更わたしは罪悪感と自己嫌悪に押しつぶされそうだった。そこへ突然ノックの音が響く。相手はホンゴウだった。
「渡し忘れたもんがある。副船長からおまえにってさ」

calamelized sugar
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    拍手お礼ss/ベックマン夢

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