ペットを迎えるには向かない仕事の一つを知っていますか? そう問われればきっとこの街の誰もが口を揃えて「深空ハンター」と答えるに違いない。
深空ハンターとして働く限り当面の間はペットなんて飼えるはずもないと諦めていたはずの彼女は自身に呆れたようにため息を吐いた。まさか獣が鼻を鳴らす音をこんなにも聞き慣れてしまう日がくるなんて。
「ロウガ」
呼ばれた名前に反応し一対の獣耳が揺れ動く。ナマエを背後から抱きかかえるようにしがみつく赤毛は妖獣のようなやわ毛ではない。
「ロウガ聞いてる? くすぐったいんだけど」
くふくふと笑う彼女の耳元には先ほどからずっと獣の鼻先がつかず離れず音を鳴らしていた。
「いいだろ。減るもんじゃない」
「出たロウガの我儘だ」
「なんとでも言えよ。オレはアンタが労ってくれるなんて罠に飛びついて来てやったんだ。これくらいもてなしの範疇だろ?」
無遠慮に頬を擦りつけて男は喉を鳴らす。
「罠じゃないよ。ちゃんとあなたを労うために準備だってしてあるんだから」
得意げな表情を隠さずに振り返ったナマエの目は丁度いい位置にあった彼の頬捕らえた。牙が隠されているその格好の位置についばむようなキスをしてナマエはもう一度、ロウガと彼を呼ぶ。
「……これはナマエ、アンタの誠意か? だとしたら足りないな。もっと寄越してくれ」
挑発的な台詞と裏腹に、狼は甘えるようにナマエを正面からもう一度抱え直すとその唇にかぷりと甘噛みしてみせた。
お祝いはこれから
Rouga