どんよりとした曇り空。波に揺られる小舟から一組の男女が島へ上陸した。
「こいつはひと雨来るな」
早いところ宿を見つけようと二人は足を早める。街中を往来する島民たちも雨を予感してか慌ただしく家路を急いでいるようにみえた。そんな中でも子どもたちだけは無邪気に遊び駆け回っている。
「じゃんけんぽん! やった勝った! お兄ちゃんの負けだ!」
「負けたァ。おれ鬼かァ……じゃあいくぞー!」
溌剌とした子どもたちのはしゃぎ声の中に聞き覚えのある声があったような気がしてシュライヤは思わずそちらを二度見する。けれど当然のことだが子どもたちの中に亡き妹の姿はない。シュライヤは鬼ごっこに精を出す子どもたちの背中をどこか虚ろな目で見つめていた。そんな彼の様子に気づいたのは隣を歩く女だった。
「シュライヤくんあっち」
彼女が指差した方、目をこらすと雑然と看板がひしめき合う中に宿屋らしいそれが見つかった。
「よく見つけたなァ」
「すごいでしょ。褒めてくれてもいいよ」
胸を張る彼女にシュライヤは要望通りの言葉をくれてやる。
「あァえらいえらい」
「なんか馬鹿にしてない? 褒めるならもっとちゃんと褒めて欲しいんだけど!」
ぷりぷりと怒る彼女を鼻で笑ってから今度はシュライヤが彼女の手を引いた。
「さっさと行こうぜ。あの雲じゃ今にも降り出すぞ」
「そうだね」
いまだ天気などお構い無しに駆け回る子どもたちに背を向けて二人はようやく見つけた宿へと逃げるように足を向けた。
ワンライ0322
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