20251204

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benn・beckman × you…


 コートを着込み靴もスノーブーツに履き替えて、すっかり冬の装いに身を包んだ彼女の姿に思わずベックマンの頬は緩んだ。まるで小動物だ。さながら冬毛のごとく普段よりゆったりとした暖かそうなシルエット。いつもならあの魅惑的で無用心なうなじが惜しげもなく晒されている首筋もこと冬島にあってはマフラーを巻いて随分と堅固なものだ。だというのにまだ寒いらしく彼女は小さく身を縮こまらせていた。普段は背筋をしゃっきり伸ばしたその凛とした佇まいが印象的な女であるだけに、普段とのギャップがまた愛らしい。
「今回もまた一段と可愛いな」
「なんかそれ、馬鹿にしてない?」
「馬鹿になんざしてねェよ」
 馬鹿にしてるだとかガキっぽいとか、すっかり彼女の口から聞きなれてしまったそれらの台詞は恐らく彼女なりの照れ隠しだとベックマンは知っている。年の差を気にしている部分もあるにはあるようだが彼女の声に含まれる甘い恥じらいの色に気づいてしまえばもはやベックマンには可愛い以外の言葉が見つけれられない。
「そういうベックマンはコート着てると……やっぱなし」
「なんだ? 教えちゃくれねェのか。おまえさんからみてどうなんだ?」
 彼女ほど着込んではいないもののベックマンも変装を兼ねてロングコートに身を包んでいた。普段のいかにも海賊らしく粗野なスタイルとは違う。比較的落ち着いた、いわばシックなスタイルと言えるだろう。つまりベックマンの自己認識からすれば彼女が言いよどむような、恋人にむかって言うことがはばかられるような、そんな感想が浮かぶなんて予想外だった。
「だめ内緒よ」
「……そいつは残念だ。だが今日のところは尋問は後にしなくちゃあな」
 ベックマンは肩をすくめて見せたがすぐさまあっさりと話を変えた。
「まずは、そうだな熱いカフェオレを出してくれそうな店でも探そう。街歩きはそれからだ」
 彼女はそっと心になにかを秘めてしまった。けれど、ベックマンは無理にこじ開けようとはしなかった。それはベックマンが彼女に配慮したなどという優しい理由ではない。内緒とはつまり、隠していることがあるのだと公言したに等しい。秘密は暴かれるためにある。海賊を前にして魅力的なまでの秘密をちらつかせることがどんな意味をもつのか。ベックマンは嬉々として隠された宝を奪いに行く海の男の一人にすぎない。そして、彼女もそれを知らない安穏とした陸の女ではない。
「ええ、とっても楽しみだわ」
 微笑む彼女の手を取ってベックマンは街へと繰り出した。

12/04 マフラーを巻いて/優しい/無用心なうなじ

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