ホットミルク

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ホットミルク

 最近夢見が悪い。けれど特別理由も思い浮かばないのでいつもシーツに潜ってやり過ごすことしかできない。本当はキッチンでお湯かホットミルクでもいれてぼんやり過ごしたいところだけれど、同居人にばれないようにしたくてそれもできずにいる。
でも今日はとうとう耐え切れずベッドを抜け出しキッチンへと向かった。船の揺れは静かで今夜も穏やかな夜だとわかる。どうせなら温かい飲み物片手に星見でもして時間をつぶそうか、などと考えてキッチンのドアを開けた。
「よう、そろそろ来ると思ってたぜ」
「な、なんで?」
先客はだれあろうシュライヤ君だった。
まあこの船には私と彼しかいないので人の気配がすれば当たり前に彼しかいないわけなのだが。
「そろそろってなんのこと?」
先ほどかけられた妙な言葉の意味を尋ねる。
「最近あんた眠れてないんだろ。そろそろホットミルクかなにかで誤魔化そうとかするんじゃないかってな」
全てばれていたなんて思わなかった。
「眠れなかったのは今日だけだよ?」
どうにか心配をかけたくなくてそんなことを言ってみる。
「嘘ばかりつかなくていい。最近のあんたは普段に輪をかけて白い肌で目元に隈もできてる」
どうやら言い逃れできないらしい。
「ん、ごめん。シュライヤ君の言う通り最近ねれてない」
「はは、いいよ別に謝らなくて。心配かけたくないって思ってくれてたんだろ」
「それは、そう」
全部彼にはお見通しらしい。
「でも今夜からはおれにたよってくれる、そうだな?」
にやりと笑う彼が、だけどなんだか頼もしくみえて。
「おねがいします」
と答えてしまった。
その夜は彼と並んでホットミルクを飲みながら星を見た。
隣に彼がいる。それだけで不思議と安心できて私は夜明けを見る前に眠れたらしい。らしい、というのは寝付いた記憶があいまいで起きたらいつも通りベッドにいたからだ。彼がここまで運んできてくれたのだろう。
まるで昨晩の会合が夢だったかのように思えたけれど、キッチンに行くとマグカップが二つ分洗い終えたあとがあってやっぱり夢じゃなかったんだなと胸が温かくなるような気がした。

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