20251205

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shanks × you…

「月が綺麗ですね」
 うっとりと熱のこもった溜息まじりの台詞。盛り上がる宴のその隅で青年の視線は目の前の女へと注がれている。
「月? あァ今夜は満月だものね」
 青年の視線には応えず彼女は空を見上げて、いい月ねと短い感想を述べた。煌々と輝く白い月。真昼のようにとはいかないが酒盛りにの夜にはぴったりの薄明りだった。
「あ……はは、そうですよね。すみません」
「なんで急に謝るのよ? もしかしてもう結構酔ってる? なんだか顔も赤いし」
 青年の顔を覗き込み彼女はその頬に手を伸ばした。けれど青年はのけぞるようにして距離をとると勢いよくジョッキを一息に煽る。
「あぁもうやめときなって。そこで大人しくしてて水持ってくる」
 女が席を立つのを青年は見送ることしかできなかった。青年はただ恍惚と彼女の背を見つめるがひとつの人影がその視界を遮った。
「よォ楽しんでるか?」
「お、大頭……!」
 先ほどまで女が座っていた場所にどかりと腰を下ろしたその男に青年は言葉を失う。
「そうかたくなるな。まァ吞め」
 シャンクスは酒瓶を傾け青年の空いた杯をたっぷりと満たしていく。
「どうだ? うめェだろ?」
「あ、はい! これ西の海の酒ですか? おれ西のが一番好きなんですよ」
「なら餞別に持ってけよ。明日にはおまえが言っていた島に着くぜ」
「え」
「なんだ聞いてなかったのか? 明日にはあんたの故郷だ。よかったな」
 冬の空気のようにカラリと笑ったシャンクスが青年の肩を叩く一方で青年は茫然と言葉もなくジョッキを傾け続ける。そこにあるのは喜びよりも戸惑いの感情だった。
「あー! もうシャンクス呑ませないでよ。っていうかシャンクスも呑みすぎ! ほらほら水と交換して」
 シャンクスと青年の手からジョッキを奪い取ると彼女は二人にチェイサーを押し付けて手近な席に腰を下ろした。
「で、何の話してたの?」
「明日にはこいつの故郷だって話だよ」
「その割になんか暗くない?」
「そうかァ? それよりなんでおまえはそっちに座るんだよ」
「べつに!」
 女の足にシャンクスがその長い足を延ばしてちょっかいをかけた。じゃれあう二人から青年は目を逸らす。
「シャンクス! ちょっとまだみんないるって」
「わかってる。部屋で、だろう? ……よっと」
 シャンクスは青年を一瞥することもなく悠然と女を抱いて船室へと歩いていく。シャンクスに文句を言いながら睦まじく宴から抜け出していく彼女の姿。それは青年が最後に見た彼女の姿だった。
 翌日、彼女にさようならと言うこともなく青年は船を降りた。
「シャンクス! 起こしてっていったのに! 見送りできなかったじゃない」
「悪ィな。おまえがあんまり気持ちよさそうに寝てたから」
 悪びれもせずシャンクスは彼女とともにベッドへと沈む。
「シャン? だめってっンもう」
 想いを伝えあった当初を思い出すような性急さ。これはもう仕方ないと諦めたのか慈しむように微笑む彼女に甘えるようにシャンクスは頭を埋めた。
「……あァ、悪いな」
 シャンクスの呟いた二度目の謝罪は彼女の耳に届くことなく悦楽と嬌声のさなかに消えていった。

12/05 空を見上げて/冬の空気/月が綺麗ですね

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