20251130

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benn・beckman × you…

 机に置いた小さなインテリア。モミの木を模したそれを布巾で軽く撫でる。もう何年も前からこの時期のわたしの部屋を彩ってくれているお気に入りのツリーだ。上から下まで点々と開けられた穴にフック式のオーナメントをぶらさげるだけのなんてことないよくあるホリデーを彩るインテリアだけどそこにあるだけで気分が華やぐ。埃を落とし終えたら次はいよいよ飾り付けができると思うとワクワクして鼻歌交じりに掃除を進めているとドアを叩く音がした。
「お嬢さん、いるか?」
「ちょっと待ってて……ベックマン早かったわね! どうぞ入って」
 布巾とツリーをまとめてテーブルの端に片付けてからドアに向かった。開けた先に佇んでいたベックマンを認めてわたしの心は人知れず音を弾ませていた。ここへ来る前に甲板で吸ってきたのか煙草と潮の香りがまだ彼を包んでいるような気がして、思い浮かんだいつもの彼の姿にわたしの胸は勝手にときめいてしまう。
「まだ仕事中だったか?」
「大丈夫それはもう終わってるから」
「……フ、なるほどな」
 テーブルのツリーに視線をやって彼はおかしそうに笑った。
「なぁに」
「いいやなんでも?」
「嘘! 絶対いまガキっぽいって思ったでしょ」
「まさか。かわいいと思っていたところだ」
 あやすように降ってきた口づけの合間にもベックマンの口元には微笑みが浮かんで見えた。
「ン、ッもう! またそうやって馬鹿にして……」
「馬鹿にしてねェってのに」
「じゃあ何よそのにやけ面は」
 手を伸ばしてその固そうな頬を思いきり抓ってみてもベックマンは困ったように眦を下げるだけだった。
「まだそれを大事にしてくれているのが嬉しくて、な。もしも笑って見えたならそのせいだ」
 彼を見上げてその瞳を覗き込めばたしかにそこには温もりがこもっていた。慈しむような、それでいてどこか自慢げにも見えるその表情に釣られてわたしの口元も緩んでしまいそうになる。
「べ、ベックマンの方こそよく覚えてたわね。これ買ってもらったときって付き合う前だったし覚えてないのかと思ってた」
「惚れた女に贈ったものだ。忘れようがねェ」
 当然だろうと言ってのけたベックマンのその言葉に胸がきゅんと音を立てたけれど、同時にわたしの頭には疑問符が浮かんだ。
「……ね、ベックってさ」
「言わねェ」
 いつからわたしに惚れてたの? そう続けるはずだった言葉はだいぶ食い気味に回答拒否されてしまった。
「だっていま!」
「……」
 ベックマンはふいと視線をそらしてしまったけれど、それが全てを物語っているとしか思えなくてわたしは声をあげて笑う。
 始まったばかりの長くて短い感謝祭の季節。わたしたちは思い出話から今年のホリデーシーズンを始めることにした。

11/30 いよいよ/小さなツリー/華やぐ

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